日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所はJava言語の黎明期からその処理系に関する研究開発をリードし,IBM開発部門と協業して業務アプリケーションの基盤として使われるJava処理系を世に送り出してきた.特に,Just-In-TimeコンパイラとJava仮想マシンの主要構成要素については各種の先進的技術を考案し,世界トップクラスの性能を達成するとともに,多数の学会発表も行ってきている.本セミナーでは,この商用Java処理系の研究開発に関する経験をもとに,以下の内容について述べる.
日本アイ・ビー・エム(株)技術理事,東京基礎研究所 サービス型コンピューティング 部長.1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専門課程博士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.以来,同社東京基礎研究所にて,プログラミング言語およびミドルウェアおよびシステムソフトウェアの研究開発に従事. 情報処理学会第41回(平成2年後期)全国大会学術奨励賞,同平成7年度山下記念研究賞,同平成16年度論文賞,同平成16年度業績賞,各受賞.理学博士.日本ソフトウェア科学会会員(元・理事),情報処理学会シニア会員,ACM Distinguished Scientist.
日本アイ・ビー・エム(株)シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー,東京基礎研究所 ディープ・コンピューティング&アナリティクス 部長.1987年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.以来,同社東京基礎研究所にてOSやプログラミング言語処理系などの研究に従事.最近は,Javaの性能問題分析などにも携わる.博士(政策・メディア).1994年情報処理学会大会奨励賞,2005年同・論文賞,2008年日本ソフトウェア科学会高橋奨励賞,各受賞.日本ソフトウェア科学会編集副委員長(元・理事),情報処理学会シニア会員,ACM Distinguished Engineer.
日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所 リサーチ・スタッフ・メンバー.1992年早稲田大学理工学研究科修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.以来,同社東京基礎研究所にて,Fortran言語の並列化コンパイラ,Java言語の動的コンパイラ,Python言語の動的コンパイラ,などのプログラミング言語処理系の研究に従事.最近は,JavaやApache Sparkからの,GPUその他アクセラレータ活用方法に興味を持つ.情報処理学会平成16年度業績賞受賞.博士(情報科学).日本ソフトウェア科学会理事,情報処理学会会員,ACM Senior Member.
9:30 - 10:00 | 受付 |
10:00 - 10:30 | Javaの登場と発展(講師:小野寺民也) |
10:30 - 10:40 | 休憩 |
10:40 - 12:40 | Java仮想マシンの実装技術(講師:河内谷清久仁) |
12:40 - 14:00 | 昼休み |
14:00 - 16:00 | Java Just-In-Timeコンパイラの実装技術(講師:石崎一明) |
16:00 - 16:15 | 休憩 |
16:15 - 17:15 | まとめと展望(講師:小野寺民也) |
1995年のJavaの登場とその後の受容の過程を概観し,Java登場時にどのような性能上の課題があったかを述べ,続く2つのセッションへの導入とする.また,性能向上の研究開発における標準ベンチマークの重要さについても言及する.
Java言語処理系の実装について詳説する.まずJava仮想マシンの概要について述べ,その主要な構成要素として,クラス管理とインタープリタ,ヒープ管理とガベージコレクション,スレッド管理と同期機構,JITコンパイラとの連携,などについて説明する.性能改善のために行った各種手法についても触れる.
Javaの動的コンパイラの実装について詳説する.まず構成の概要について述べ,主な最適化,動的コンパイラ特有の最適化,Java言語特有の最適化,について説明する.また,Java言語からSIMDやGPUなどのハードウェア機構を使う試みについても述べる.商用コンパイラの実装に関する経験談についても触れる.
まとめとして,プログラミング言語の実装技術の歴史を概観し,Javaの誕生と発展に果たした役割について考えてみたい(内容は予告なく変更することがありますw).
PPLサマースクールの参加費は以下の通りです.
学生会員1000円, 学生非会員2000円, 一般会員2000円, 一般非会員3000円
参加ご希望の方は 日本ソフトウェア科学会第33回大会共通の 参加登録ページ からお申し込みください。 人数把握のため、 また、当日の現金の扱いを避けるため、 事前登録をお願いしております。ご協力ください。
PPLサマースクール2016 幹事
馬谷誠二 (京都大学)
E-mail: umatani [at] kuis [dot] kyoto-u.ac.jp